学生日記

学生の、日記です。

16歳、真夏の大冒険!

今週のお題「人生最大のピンチ」

人間万事塞翁が馬です。今の時代なんて、塞翁がサラブレッドしてます。何が起きるかわかりません。しかし、僕はというと、16年、品種改良された何もなさです。安泰も安泰。そんな僕が、まさか手術台に乗せられる日が来るとは思いもしませんでした。

親知らず四本抜き。

文字列だけ見るとスナイパー4人抜きみたいでかっこいいんですけど。僕は生まれつき顎が小さくて、今までも歯を四本抜いてきました。そして、また歯医者で追加オーダーされて、四本抜かれることになりました。多分これ以上抜かれたら僕は人間を名乗ることが難しくなるでしょう。

手術方法は全身麻酔で一気。全身麻酔なんてドクターXでしか見たことがありません。あぁ、怖い怖い。

入院もするらしく、同意書に若干震えながらサインしました。母が。

手術前日、最後の晩餐を終わらせました。もう思い残すことはありません。入院の準備をして、入眠。緊張で眠れないなんてことはなく、麻酔が入ったかのようにすぐ眠りました。

朝一車に乗り込み、病院へ。待合室で待っていたら、隣の男の子がちょうど僕と同い年くらいでした。やっぱり夏休みだから学生が多いのかなーと考えていたら、聞き覚えのある名前が呼ばれました。僕の名前でした。

お母さんと別れの挨拶。「じゃあね。」「生きて帰ってくるよ。」

病室へ連行されました。そこには二人の同志。親知らず三銃士。まず20代のさえない顔をした男性。そして僕の隣が…

さっきのあいつ!

まさかの待合室で隣にいた高2だったという小さな奇跡が起きました。いいよ、こんな安っぽいラブコメ展開。

僕よりも先に同い年の人が手術室に運ばれました。頑張ってこいよ、とひそかに応援していたら、間もなくして帰ってきました。ポッポ、ポッポ、という医療ドラマと水泳のテストでしか聞いたことのない音が響き渡ります。その音は次第に遅くなっていき、ついに、沈黙。

同い年ーーーーーーーーー

なんて展開にはならず、というかもしそうだったら何帰ってきてるんだよって話なんですが、まぁ、無事、帰ってきていました。そして、次に呼ばれたのは16年聞いてきた名です。

看護師と一緒に手術室へ向かいます。手術室に近づくにつれてだんだんあたりが白くなっていきます。僕の顔も、蒼白になっていきます。

着いたのは軽快な音楽がかかる部屋。名前は知りません。ちなみに僕の好きな曲はいきものがかりのYELLです。いや、手術室で「さよならは悲しい言葉じゃない」なんてアレなんで、かけてほしくないんですけど。

手術台に乗り、もう後は野となれ山となれ。墓にさえなってなければなんでもいいや、と思い、身を任せました。よーし、麻酔いつ来るんだ。え、まだ?そろそろm

 

 

 

 

 

…ここは…?ものすごくいい目覚めです。テスト期間で疲れ切って寝た次の日の日曜みたいな。そういえば呼吸が苦しい。水泳のテストで聞く音がします。もしかして、終わった…?

マジで、記憶がありません。いや、当然なんですけど。途中で大門未知子とか入ってきたかもしれないんですけど、一切記憶がありません。あとで高額請求されたらどうしましょう。メロン、アレルギーなんだよな…

病院食が出てきて、それなりにおいしそうだったんですが、生憎口が開けられません。10分おきに休憩をはさみ、看護師さんの半ばイライラした「まだ頑張ってますねー」の声にも耐え、ついに無念のギブアップ。無理でした。一方隣の同い年が、本当にガツガツ食べているのが音で分かりました。

あとは点滴に次ぐ点滴。自分は白ひげなんじゃないかと錯覚しました。夜も針が刺さりっぱなしで、それも利き腕の右に刺さっていて、寝にくいことこの上ありませんでした。白ひげもさぞ寝にくかったことでしょう。

そして次の日、母が迎えに来てくれて、帰りました。帰った後もらった薬に「細川」と書かれていて、これ僕のじゃない!と靴を発見したサツキみたいな声で電話したら、「内容同じだからいいよ」と言われました。僕と同じ薬をもらった細川って、いったい何者なんでしょう。まさか…

ワンピースが公開中だそうです。僕もぜひ見に行きたいんですけど、顔が蒲生君くらい腫れています。あと、手術のことを顧問に言うのを忘れていたことに気づきました。あと、宿題がレッドラインくらい詰みあがっています。それに加え、痛い。さらに、家族旅行に行く日に試合がかぶっていることが発覚。平和だった夏休みが、一気に予定という名の海賊に攻め入られています。

余は、まさに大海賊時代!