学生日記

学生の、日記です。

雨ニモマケズ

猫になりたいって、思うんですよ。

 

 

ことの発端は物理の時間。眼鏡をかけたどんぐり髪型の先生が呪文を唱えています。ちょっと呪文に耳を傾けてみると、なにやら音がうなってるらしいです。うねり、なんて言葉使うの炭治郎くらいだと思うんですけど、それでも音にはうねりがあるらしく、なんか、こう、うねっているらしいです。うねりがすごいらしいです。

さて、うねっている音を探してみよう!と先生が言い、うねってる音の代表例として除夜の鐘を鳴らしながら、周りと相談してねーなどというわけです、あのメガネ。除夜の鐘鳴る中でのペアワーク。シュール。かと言ってこういうペアワークは参加しない主義というか、多分周り全員僕の名前すら知らないっていうか。こっちもこっちで寝たフリで対抗しようとした時、

「うねってる音って何〜」

という前の席の女子の声が聞こえました。僕はなるべく余裕を持って、急に話しかけられた動揺を隠し、

「それな笑」

と答えたんです。おそらく模範回答。この文字数、同意の意思を表すのには最適です。テストなら文句なしの100点。現代の若者を演じきれています。いや、現代の若者なんですけど。

するとその前の女子は「は?」みたいな顔をして、隣のイケメン男子と話し始めました。

解答欄を間違えました。

いや、待て待て待て。VAR!レフェリー!女子は完全にこっちの方向を向いていました。多分。解答欄を間違えたのはあのイケメン男子だ!この自意識過剰が!恥を知れ!

あれ?そもそも僕って前の女子との接点はゼロです。話したことすらない人が急に、それも休み時間1人でゲームしているような男子に話しかけますか?それに相手の表情は「困惑」。状況から推理するに、あの女子が話しかけたのはあのイケメン。小五郎でもできる推理です。よって、自意識過剰は完全に僕。QED。ぜひ恥を知ってもらいたいところですね。ははは。

この間、僅か1秒。

僕はその笑顔を継続させながら、ゆっくりと顔を腕に乗せ、声にならない叫びを出しました。除夜の鐘が、ゴーンと鳴りました。

そして5分後、冒頭に戻ります。

猫になりたい。会話なんてニャーくらいでいい。それな、とかいらない。うねるなんて言葉はいらない。猫の全ての模範解答は「ニャー」。なんと楽なのでしょう。

あぁ、猫を飼いたいなんて贅沢は言いません。猫を撫でたいなんて贅沢は言いません。ただ、猫になりたいだけなのです。ペアワークなんてない、久しぶりに会った友達と気まずくなることなんてない、トイレで微妙な人と2人並ぶことなんてない、他人の会話の邪魔をしない、

 

そんな猫に、私はなりたい。